この少年、晴明の後継につき。
時は平安。都には無数の妖(あやかし)が跋扈し、時には人間を喰らうこともあった。そんな妖を退治できるのは、式や呪いを扱う術士、陰陽師。13歳の昌浩は稀代の陰陽師、安倍晴明の末の孫。陰陽師としての資質は十分なもののまだまだ半人前な昌浩は、妖を見る力『見鬼』の才がなく、陰陽の道を諦めていた。しかし突然出会った白い物の怪を『見鬼』の才のない自分の目の代わりにして、妖の調伏に向かうのだが…。昌浩は都を救えるか!? そして、一人前の陰陽師になれるのか!? 半人前の陰陽師が、都の闇を叩き切る…!!
(C)2006 結城光流・あさぎ桜/角川書店・少年陰陽師製作委員会
時は平安…。安倍昌浩は、稀代の大陰陽師・安倍晴明の孫でありながらも、妖を見る力『見鬼』の才がなく、陰陽の道を諦めていた。しかしその他の道にも才能を見出せず途方に暮れていたところ、突然白い物の怪と出会う。そんな中、都では謎の妖が跋扈しており、晴明にその退治を頼まれた昌浩は、物の怪を『見鬼』の才のない自分の目の代わりにして、調伏に向かうのだが…。
陰陽師の見習いとして陰陽寮に出仕するようになった昌浩。元服の儀を終わらせ、父親である吉昌と左大臣・藤原道長のもとに報告のため出向き、その一の姫・彰子と出会う。彰子は普通の人には見えないはずの物の怪であるもっくんが見える『見鬼』の才の持ち主だった。 昌浩もようやく見習い陰陽師として陰陽寮での雑事にも慣れ始めた中、内裏で突然火の手があがる…。
先日の内裏炎上で身を守る結界が壊れた彰子は、晴明により再び強固な結界を張ってもらった。また昌浩は、その火事の原因を苦手な占いで探ろうとするも、その占いの意味がわからずやきもきしていた。内裏の復興もなかなか進んでおらず、占いでは埒があかなくなった昌浩は、同じ妖怪である百鬼夜行に情報がないか訊きにいくが、そこで火事の時と同じ妖気を再び感じ…。
紅蓮の炎が効かず、取り逃がしてしまった謎の妖の正体を思案しながらも、陰陽寮の日々の仕事に追われる昌浩。疲れ果てて書簡庫で居眠りしてしまうが、その夢でまた新たな妖怪が姿を現した。調べてみると、どうやら先日の牛の妖怪も、夢に出てきた妖怪も異邦の化け物だった…。なんとか居場所を探ろうと、隠れている雑鬼たちを探し出し問い詰めていると、瘴気と共に何者かの声が背後から響き…。
とうとう姿を現した妖怪たちの主、それは西の国に伝わる古の妖・窮奇だった。あまりの力の差に、昌浩は紅蓮に逃げるように言うが、紅蓮は昌浩を庇って怪我をしてしまう。なぜ紅蓮がそこまで昌浩を守るのか…。それは誰もが怯える自分に、幼い頃の昌浩が怯むことなくまっすぐに見つめてきたからだった。そして窮奇との戦いに苦戦していると、突然何者かが現われ、凄烈な霊気が辺りを満たし…。
異邦の妖・窮奇を探すため、昌浩は夜に都の見回りをするも、窮奇は見つからず、雑鬼たちが次々と襲われていく。手掛かりを得るため、襲撃の現場に行ってみると、そこには恐ろしげな顔の牛車の化け物がいた。そんな中、窮奇を見つけることができない昌浩に対し、晴明の式である十二神将・青龍は業を煮やし始めていた。また、青龍は過去になにやら紅蓮と確執があったようで…。
彰子が妖に狙われている…? 晴明のもとに、彰子から異変を知らせる文が届けられた。昌浩が晴明の名代で彰子を訪ね、詳しい話を聞くと、彰子の遠縁にあたる姫・圭子が突然不穏な気を纏って訪ねてきたという。病で伏せっている圭子姫の身に漂う尋常ならざる妖気。 そして、圭子姫は今夜彰子を迎えに来るという…。事の次第を調べるため、昌浩は圭子姫の邸に向かうが…。
以前都で聞いた、貴船で丑の刻参りをする鬼女の正体…それは圭子姫だった。異邦の妖たちは圭子姫を利用して、貴船の神を封じ込め、貴船山を隠れ家としていたのだった。昌浩は、さらわれた彰子を探すため貴船を駆け回るが、圭子姫の妨害にあってしまう。深い怨念に捕われてしまった圭子姫を救うため、そしてさらわれた彰子を取り戻すため、昌浩は持ちうる全ての力をぶつけるが…。
異邦の妖・ガクとシュンに襲われ、昌浩は絶体絶命の危機に陥ってしまう。貴船の龍神の力を借りようとするもうまくいかず、諦めかけた昌浩の脳裏に、以前晴明から教えてもらった秘密の言葉がよぎる。龍神の封印を解き放ち、なんとか敵を退けるも、操られていた彰子に刺されてしまった昌浩。それを見た紅蓮は、晴明に施された封印を打ち破ってしまい、激しい炎が周囲を覆い尽くす…。
先の戦いによる傷がようやく癒え始めた昌浩。彰子の様子を伺いに藤原邸を訪れると、晴明の張った結界が弱まっていた。昌浩を危険な目にあわせたくないと訴える彰子に、必ず自分が護る、そして来年、貴船の蛍を一緒に見に行こうと約束を交わす。そんな中、晴明のもとに、彰子の入内の話が舞い込む。異邦の妖・窮奇の活動も活発化し始め、その影が彰子を遂に捕らえてしまい…。
彰子が無事入内できるようにと、昌浩は必死に窮奇を探すが、その努力も空しく、ほとんど情報を得られぬまま日々が過ぎていっていた。唯一、水のある所で異変が起こりやすいことがわかったが、昌浩の身体には疲労が蓄積していき、とうとう倒れてしまう。それでも都の見回りを欠かさない昌浩の前に、異邦の妖・挙父と影の窮奇が姿を現す。その時、昌浩の身体に異変が起こり…。
彰子の入内が明日に迫ってきた。昌浩は入内の前に窮奇との決着をつけるべく、都の南にある巨椋池に向かう。そこで紅蓮と引き離され、窮奇の異界に連れ込まれてしまった昌浩は、窮奇と壮絶な戦いを繰り広げる。しかし戦いの最中、窮奇が昌浩に言葉を投げかける。配下に下ればお前の願いを叶え、彰子をさらってきてやる、と。その言葉を聞き、動揺を隠せずにいた昌浩は…。
安倍邸に居候することになった彰子に、昌浩はなかなか慣れずにいた。落ち着かないながらも、陰陽寮に久し振りに出仕すると、陰陽生の筆頭である藤原敏次に嫌味を言われてしまう。そんな中、見たこともない怨霊が出ていると雑鬼たちから教えられ退治に赴くも、とうとう都人が襲われてしまった。ようやく神隠しが治まったところに、怨霊騒ぎ…。晴明は、再び不穏な動きを感じ取るが…。
先日逃してしまった怨霊が、その後何の音沙汰もないことに疑問を抱く昌浩ともっくん。いつも通り陰陽寮に出仕すると、藤原行成が怨霊による病に伏せているとの報が入る。様子を伺いに行くと、行成からなぜ敏次がきつくあたってくるのかの理由を聞かされ、昌浩は今後真面目に仕事に取り組もうと決心する。しかし敏次は怨霊に取り付かれ、怨呪の玉で行成を呪殺しようとしていた…。
行成を苦しめている怨霊の正体…、それは四十年前に冤罪で大宰府に流された殿上人・穂積諸尚だった。行成を、そして敏次を救うため、昌浩は諸尚の調伏に乗り出す。また、都中で不穏な兆しが見え始め、不安を煽っていた。その間、晴明はかすかに聞こえてきた歌声の出所を追い、行き着いた先で謎の女術師と相対する。晴明を亡き者にしようとする、謎の女術師。その正体とは一体…。
都中に怨霊や死霊がはびこる中、昌浩は防人の霊が彷徨っているのを見つける。成仏させようとすると、見たこともない百鬼夜行がその霊を狙ってきた。なんとか百鬼夜行は退けるも、昌浩は防人の霊に憑依されてしまう。そんな中、都で百鬼夜行に襲われている女性を助けた昌浩。しかしその女性は昌浩に、何故生きているのかと問い詰めてくる。紅蓮は過去に昌浩が襲われた事を思い出し…。
防人の霊が昌浩の前に現われたのは、貴船の龍神が昌浩のもとへと導いたためだった…。厄介事を押し付けられた、と激怒するもっくんに連れられて、昌浩は貴船へと向かう。そこで防人の霊を落そうとするが、百鬼夜行に襲われ意識を失ってしまう。また、晴明も離魂の術で貴船に向かい、そこで百鬼夜行に飲み込まれながらも、取り込まれずにいた謎の女術師・風音を救い出したが…。
昌浩の兄、成親が都へ戻ってきた。昌浩ともっくんは吉昌に頼まれ成親の邸へ向かうと、そこでは成親たち親子が謎の妖に襲われていた。助けにいこうとするも、もっくんが邸に入ろうとせず、結局妖を取り逃がしてしまう。もっくんの様子がおかしいと昌浩は晴明に告げるが、心配ないと言われ、再び謎の妖と対峙するが、もっくんはいつものように行動できず、小姫が攫われてしまう…。
陰陽寮で敏次より失せものの相が出ていると言われた昌浩に、もっくんは気にしないよう告げる。だがその夜、昌浩は妙な夢を見る。それは、もっくんが、昌浩がどんなに呼び止めても、振り向くことなく闇の中へと消えて行くという夢だった。その内容に不安を覚えながらも、突然の北辰の翳りに焦る昌浩。帝は何者かの呪詛にかけられ、その呪詛は帝の后になるはずだった彰子にまで影響を及ぼしていた…。
黄泉の瘴気により、臥せる人、盗人が増え都が荒れ始めていた。瘴気を打ち消すため、なんとか呪詛を行っている者を見つけ出そうとする昌浩。そんな中、晴明は参上した内裏で見つけた内親王脩子姫に不穏な空気を感じ追いかけるが、脩子姫は風音に攫われてしまう。瘴穴が開かれて、黄泉の瘴気が地上を覆う…、これと同じ状態になった時の事を晴明は思い出し、昌浩にその時の話をするのだった。
瘴穴に飲まれ、もっくんや神将とはぐれてしまった昌浩。人の気配を追ってきた神将とは合流したものの、もっくんは見当たらず脩子姫を見つける。なんとか脩子姫を説得し脱出を試みるが、異形に阻まれしまう。苦戦をしていると、突然現れた紅蓮の炎によって異形が崩れ落ちていった。しかし再会を喜び近づく昌浩に、紅蓮が襲い掛かる。紅蓮は風音によって縛魂の術をかけられてしまったのだった…。
宗主に戻るよう促され、六合の懸命な説得にも応じず戻ろうとする風音に、六合は甘言を吐く嵬の左首を攻撃する。すると風音は突然霊力の光につつまれた。その霊力に道返の守護妖が反応し、身を犠牲に瘴穴を閉じたため晴明たちも瘴穴を脱出する。貴船に戻った晴明たちは高淤に事の次第を説明し、いよいよ黄泉への扉が開かれてしまうことを知る。晴明はそれを案じ、出雲へ思いを馳せる…。
真実を知るために、怪我をおして貴船を訪れた昌浩。そこでタカオカミノカミから今後取れる選択肢を突きつけられる。紅蓮を倒すか、封印が破られるのを黙って見ているか、タカオカミノカミにすべてを託すか、と…。次の新月までに道を決めよと言われ昌浩は迷うが、出仕した陰陽寮で触れた敏次の優しさ、そして成親の家で会った子供たちの顔を見て、心を決める。果たして昌浩の選んだ道とは…。
黄泉の国へと繋がる道反の洞穴。洞窟がある出雲国の高野山にやって来た昌浩たちだが、智鋪の宮司の術により、そこに至る道は封印されていた。その頃、道反の洞窟内にいた風音は、嵬に促され洞窟の奥へと向かっていた。智鋪の宮司に近づくことを禁じられていた氷室へと、足を踏み入れる風音。彼女が目にした、氷柱に閉じ込められた人影こそは、道反の巫女である風音の母であった…。
黄泉の国へと繋がる第一の封印は開かれた。その気配を感じ、破られた封印の地へと急ぐ昌浩たち。そこには、風音の霊力を利用し封印の扉を開いた智鋪の宮司が待ち構えていた。晴明の命により、昌浩と勾陣、青龍は聖域の最奥にある第二の封印の場所へと向かう。玄武、太陰、白虎へと、洞窟から漏れ出した瘴気から都の人々を守るよう告げた晴明は、ひとり智鋪の宮司との戦いに臨む…。
神殺しの焔を身体に宿し、力の依り代に朱雀の太刀を携えた昌浩は、紅蓮の元へと向かう。智鋪の宮司の縛魂の術に心を囚われ、神将としての理を再び犯した紅蓮。青龍は紅蓮を今度こそ殺そうと対峙するが、それを制した昌浩は、紅蓮を討つべく自ら立ち向かう。冷酷に炎を放つ紅蓮を術で縛りつけ、昌浩はある覚悟を胸に秘め、焔の刃を振るい紅蓮を貫いた…。