人々の内側で蠢く不安と弱さが最大限に増減されたとき、
“少年バット”は現れる——
東京武蔵野で発生した通り魔事件。被害者である月子の不明瞭な供述から、周囲は本人の自作自演によるものと疑う。だが、第二の被害者が出て事態は一変。存在するはずがないと思われていた犯人は“少年バット”として事件を取り巻く人たちを次々と襲っていく。“少年バット”とは一体何者なのか? そして次なる標的は?
(C)今 敏/株式会社マッドハウス/「妄想代理人」製作委員会
超人気キャラクター“マロミ”を世に送り出し、一躍有名になったデザイナーの月子。帰宅途中の彼女を何者かが襲撃した! 猪狩と馬庭の二人の刑事は、月子から聞いた犯人像を手がかりに通り魔の犯行として捜査を開始するが、全く成果は上がらない。次第に猪狩は、曖昧な供述を重ねる月子の自作自演ではと疑いはじめる。
小学6年生の優一は学校一の人気者。毎朝ローラーブレードで風を切り通学路を駆けていく。しかし、その姿が“少年バット”に似ていることから、「犯人は優一では?」という噂が学校中に広まる。優一は、児童会長選挙を競う転校生の牛山が噂を流したのではと疑い憎む。そんな中、少年バットによる第3の犯行が起きた!
優一の家庭教師、蝶野晴美。彼女には人には言えない秘密があった。大学研究室助手“晴美”と、ホテトル嬢“まりあ”という二つの人格があることだ。ある日晴美は、恋人からプロポーズされたのを機にまりあとの別れを決意する。しかし、晴美が幸せになることを疎ましく思ったまりあは、勝手な行動で晴美を追いつめていく。
交番に勤める巡査長、蝦川雅美。真面目との評判の裏で、実はヤクザと内通する腐敗警官である。後ろめたさを感じつつ捜査情報を流し、見返りに金や女を要求する毎日。ある日蝦川は組織の幹部、真壁から金を返せと脅される。返済の当てもない蝦川は、金を求めて危険な犯罪に手を染めるのだが…。
通り魔事件の犯人、“少年バット”がついに逮捕された! その正体は中学2年の狐塚誠。早速取り調べを開始する刑事だが、自らを“聖戦士”と呼ぶ狐塚の現実離れした言動に戸惑うばかり。なんとか事件の手がかりを得ようとする馬庭は、狐塚のある言葉から事件の謎を握る人物をひらめく。
ついに少年バット事件の目撃者を発見した刑事たち。その証言の真相を問いただすため、再度月子を警察に呼び出し事情聴取を行う。同じ頃、たまたま少年バットを逮捕した汚職刑事蝦川の娘である妙子は、父の部屋から小型カメラで盗み撮りされた自分の映像を発見、ショックと恐怖で呆然としていた…。
逮捕したはずの少年バットが再び現れた! 困惑の中、真犯人を巡り対立する刑事、猪狩と馬庭。被害者の共通点は“追いつめられた状況”と考え、独自の調査を進める馬庭。その激しい思い込みと奇行とも取れる暴走ぶりに、猪狩はあきれ果てる。そんなおり、新たなる最悪の事態が発生した…。
幼いかもめ、マッチョなゼブラ、くたびれた老人の冬峰は自殺をしようと計画し集まったチャット仲間。窒息、睡眠薬、飛び降りと、さまざまな自殺を試みるがことごとく失敗。ついに三人は“追いつめられた人間”のところに現れるという、少年バットに殺されようと念じはじめるのだが…。
井戸端会議に花を咲かせている四人の主婦。話題の中心はあの少年バット。真実と嘘が入り混じった噂話が語られる中、最近引っ越してきたばかりの美枝子はいまいち話の輪に加われない。なんとか三人の気を引こうとする恵美子は、ついに自ら“本当の”少年バットの噂話をはじめた…。
急上昇するマロミの人気。それはついにTVアニメーションが制作されるまでになった。だがその制作現場では、監督が逃げ出したことから大混乱。制作スタッフは迫る納期にイライラしていた。そんな中、制作進行の新人、猿田は作品を完成させようと奔走するが…。
昔かたぎの刑事、猪狩は“少年バット事件”のため失職、今では警備員として働く日々。その妻、美佐江は昔から身体が弱く、ついに医者から手術を勧められる。しかし、厳しくなる一方の家計を前に、次第に「死んでしまった方が夫のためになるのでは…」と思いはじめていた。そんなある日、少年バットが美佐江の前に現れた!
失職した刑事の馬庭は、視力補正メガネ、ボロボロのこうもり傘、背中には無線機という奇妙な姿で今日も少年バットを追いかける。事件の鍵は月子の幼年期にあることを探りあてた馬庭は、その真相を探るべく月子の父のもとに向かい、そこで月子の過去に横たわる重大な事実を知る!
心安らぐ昔ながらの風景が懐かしい“記号の町”に紛れ込んだ月子と猪狩。一方、現実世界では黒い塊と化した少年バットが人々を飲み込んでいく。最後の力を振り絞り猪狩を現実に引き戻そうとする妻の美佐江と、少年バットを倒すために奮闘する馬庭。そしてついに少年バットの正体が明らかになった!